AI(人工知能)

ChatGPTの商用利用と著作権で気を付けるべき点は?

ChatGPTの活用が一部では飛躍的に進んでいます。ChatGPTは現時点の利用規約において、商用利用は可能となっています。

しかしながら、大企業など一部においては様々クリアしなければならない点があって、活用方法で悩んでいるところもあるのではないでしょうか?私は大企業に長年属していたので、なんとなく想像がつきます。

本記事では、ChatGPTの基本的なことと、OpenAI社による利用規約の紹介、商用利用時に気を付けるべきこと、著作権の問題、事例について解説致します。

ChatGPTとは

ChatGPTは、大規模言語モデル(LLM)と呼ばれるAIで、その基盤となっているのがOpenAI社が開発したGPT(Generative Pretrained Transformer)シリーズです。
このAIツールは、質問に対して答えたり、記事を生成したりするなど、人間のように自然なテキストを生成する能力を有しています。

2022年11月30日に公開されたときはChatGPT-3.5でしたが、その後2023年3月にChatGPT-4が、2023年10月にChatGPT-4 Turboが登場し、コンテキスト理解能力、精度が益々向上しています。

OpenAI社は人工知能の研究と開発を行う組織であり、ChatGPTを含むGPTシリーズの開発者です。彼らは、AI技術が持つポテンシャルを引き出し、それを社会全体に利益をもたらすよう努めています。この組織によって開発されたChatGPTは、その最先端技術を用いて、多くの場面で利用されることが目指されています。

商用利用の定義と範囲

商用利用とは、直接的または間接的に経済的利益を追求する目的で製品やサービスなどを使用することを指します。これには、オンライン広告からの収益、製品の販売、有料サービスの提供などが含まれます。ChatGPTを商用環境での運用を考える際、これらの定義を踏まえた上で、ユースケースに適した形での導入が検討されます。

商用利用の一般的な解釈

一概に商用利用といっても、その定義は多岐にわたります。一般的に、直接または間接的に収益を生み出す目的で何らかの製品やサービスが使用される場合、これを商用利用と解釈されます。例えば、商品の販売、サービスの提供、広告を通じての利益獲得などがこれに該当します。

ChatGPTを用いたビジネスモデルの事例

現在、ChatGPTをビジネスで活用するモデルは多種多様です。顧客サービスでの問い合わせ対応や、BringRiteraのようなSEOに強い記事作成など、その用途は無限大と言っても過言ではありません。
例えば、文章やコードを自動生成して効率化を図るスタートアップ企業や、ChatGPTを利用した教育プログラムを提供する教育機関などが存在し、ChatGPTはすでに幅広く商用利用されています。

著作権とは?

次に、著作権とは何かについて解説します。

著作権法の概要

著作権法とは、創作物の創作者がその創作物に関する一定の排他的権利を有することを法的に保護するための法律です。著作権の対象となるのは文学、音楽、美術、映画、プログラムなど様々な分野の作品で、画像やイラストは著作権の焦点となる代表格とも言えます。

著作権には複製権や公衆送信権、さらに翻訳権などの権利が含まれ、これらの権利は一定期間、原則として創作者に属します。著作権が発生するためには、思想又は感情を具体的に表現したものでなければなりませんまた、作品が独創性を持ち、形に表出されている必要があります

日本国内の著作権に関する法律

日本における著作権は著作権法で定義されており、その保護期間は原則として創作者の死後70年です。しかし例外も存在し、たとえば共同で作られた作品や法人が発行する作品は、公表後50年が保護期間となります。日本国内では、著作権侵害に該当する行為は刑事罰の対象となることがあり、また私的使用のための複製等の一定の行為は合法とされる著作権法上の例外も定められています。

著作権侵害の要件は、以下の2点を両方満たすことが条件とされています。

作風や画風に関しては、著作権の対象になりません。なので、例えば画像生成AIで特定の画家の作風を指定して何かを描いてもらったとしても画風が似ているというだけで著作権の侵害にはなりません。

ただ、OpenAI社のDALL-E3に関しては、1912年以降のアーティストの作風は模倣できないと返してきます。それ以前のアーティストの作風であれば模倣してくれます。国によっても著作権の法律が異なるからでしょう。

ゴッホの作風で画像生成AIに作成してもらった画像

AIの著作権に関し日本では文化庁が議論を続け、2023年6月19日には「AIと著作権」と題したセミナーが開催され、次の資料が公開されています。

AIと著作権

また、2023年12月20日には「AIと著作権に関する考え方について(素案)」を公開しました。

生成AIで著作権のことを考える場合、大きくは以下2つのフェーズについて考慮する必要があります。

生成AIが情報源として利用する場合

2018年の著作権法改正の中の、著作権法第30条の4の規定により、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない場合、機械学習の情報源が日本の情報であれば、生成AIが学習元として利用するうえでは著作権の侵害にはなりません

(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
第三十条の四
著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合

生成AIが生成するコンテンツ

生成AIが生成するコンテンツについては、学習元の著作物と類似のものを生成してしまうと著作権の侵害となるリスクがあります依拠性があるかどうかについては、その著作物を学習元としているかどうかによります

ChatGPTの商用利用と著作権に関する利用規約

OpenAIは、ChatGPTの利用規約の中でChatGPTの商用利用に関して次の通りに示しています。

Ownership of Content. As between you and OpenAI, and to the extent permitted by applicable law, you (a) retain your ownership rights in Input and (b) own the Output. We hereby assign to you all our right, title, and interest, if any, in and to Output. 

Similarity of Content. Due to the nature of our Services and artificial intelligence generally, output may not be unique and other users may receive similar output from our Services. Our assignment above does not extend to other users’ output or any Third Party Output. 

日本語訳すると次のような意味になります。

コンテンツの所有権
ユーザーは、ユーザーが入力する内容および、それに伴いChatGPTから出力された内容に関して所有権を持ち、OpenAIはすべての権利をユーザーに譲渡します。

コンテンツの類似性
このサービスであるAIの性質上、出力内容は独自ではない場合があります。他のユーザーが類似の出力を受け取ることもあります。第3者、他のユーザーの権利についてはOpenAI社が譲渡するものには含まれません。

つまり、OpenAI社の権利を侵害するリスクはないですが、第3者の著作権を侵害するリスクについては気に留めておくべきと言えます。

ChatGPT利用時の配慮点

以上の通り、ChatGPTは商用利用が可能ですが、第3者の権利を侵害するリスクは配慮する必要があります。具体的にはどのようなことに気を付けるべきなのでしょうか?

ChatGPTへの入力内容

入力内容について、第3者の内容をそのまま利用することは、著作権侵害のリスクがあります。ChatGPTは画像を入力することもでき、画像も同様です。

ChatGPTが引用した情報

ChatGPTが引用した情報がある場合、その引用元の著作権を侵害するリスクがあります。

ChatGPTが創作した内容

ChatGPTが創作した内容が、既存のコンテンツに類似してしまう可能性があります。例えばChatGPTは作詞もしてくれますので、作詞内容で考えてみると分かりやすいのではないでしょうか。
ウェブサービスとしてコピーコンテンツチェックツールがありますので、それを用いてチェックを行うなどして権利侵害を回避しましょう。

CopyContentDetector

事実かどうかと、名誉に関わることの確認

生成AIは誤った情報を提示することがありますので、事実確認は必要です。
また、事実であったとしても名誉棄損となる内容を公開することは法律上問題ですので、その観点でもチェックはもちろん行うようにしましょう。

ChatGPTによる争いや議論の事例

以下に、OpenAI社が争いになっている事例と、生成AIにまつわる論争をご紹介します。

米国作家のマネージメント会社「The Authors Guild」による訴訟

米国のJohn Grisham, George R.R. Martin, Jonathan Franzenら著名な作家をマネージメントしている会社「The Authors Guild」により、OpenAI社が著作権侵害をしているとして訴訟を2023年11月に起こされました。

引用:
OpenAI, Microsoft hit with new author copyright lawsuit over AI training
Top Authors Join Lawsuit Against OpenAI Over “Mass-Scale Copyright Infringement” of Novels

オーストラリアの市長による抗議

2023年4月、オーストラリアの市長が、同氏がオーストラリア国立銀行の子会社に勤務中に、贈収賄で逮捕されたという虚偽の内容をChatGPTが示したとして、名誉棄損で訴訟する可能性を示唆しました。実際は同氏は該当事件の内部告発者であり、事実と異なる内容でした。

引用:
Australian mayor readies world’s first defamation lawsuit over ChatGPT content
ChatGPT: Mayor starts legal bid over false bribery claim

日本新聞協会が著作権法改正を求める

先述の通り、現在の著作権法では、生成AIの学習元として用いる分には、そこに著作権があったとしても著作権法に抵触しません。あくまで出力内容が焦点となります。

これに対して日本新聞協会は2023年10月30日、次の通りに異議と著作権法の改正を求める表明を出しました。

「第30条の4」がある限り、報道コンテンツへのタダ乗りが広がっていくのは避けられまい。これ以上の「被害」を防ぐため、政府は著作権法の改正を早急に検討すべきである。「第30条の4」を見直して、少なくとも、AIによる「学習」を著作権者が拒否できる、もしくは、利用時には許諾を得る仕組みの整備が必要だと、当協会は考える。

生成AIに関する基本的な考え方

米紙ニューヨーク・タイムズがOpenAIとマイクロソフトを提訴

2023年12月27日、ニューヨーク・タイムズがOpenAI社およびマイクロソフトを相手に「数十億ドル」の損害を主張する訴訟を起こしました。

ニューヨークタイムズは訴状の中で、記事のうち「数百万本」がChatGPTの学習に用いられていると主張しています。またニューヨークタイムズは、2023年4月には示談交渉を行ったものの和解に至らなかったことを明かしています。

引用元:米紙ニューヨーク・タイムズがオープンAIとマイクロソフトを提訴 著作権侵害で

この訴訟の結果は今後の生成AIの行方を大きく左右するであろうことから、世界中の注目を浴びています。

ChatGPTは著作権を気にしながらうまく活用

ChatGPTは現時点、商用利用が可能ですが、利用規約は変わっていく可能性があるので、随時確認をするようにしましょう。

商用利用をするうえで、著作権侵害などのリスクは気にすべきですが、リスクがあるからといって使わないというのはあまりにも非合理的と言えるほどChatGPTは素晴らしいサービスです。

例えばChatGPTの出力内容をもとにニュース記事のまとめサイトなど作れば著作権侵害のリスクはありますし、逆に言えば、そういう非常識なことをしなければ問題ないはずで、使い方次第です。出力内容についてチェックさえ行えばよいわけなので、ぜひ活用しましょう。

BringRiteraはChatGPTベースでSEOに強い記事を作成しますので、よろしければお試しください。

著者のイメージ画像

株式会社BringFlower
稲田 高洋(Takahiro Inada)

2003年から大手総合電機メーカーでUXデザインプロセスの研究、実践。UXデザイン専門家の育成プログラム開発。SEOにおいても重要なW3Cが定めるWeb標準仕様策定にウェブアクセシビリティの専門家として関わる。2010~2018年に人間中心設計専門家を保有、数年間ウェブアクセシビリティ基盤委員も務める。その後、不動産会社向けにSaaSを提供する企業の事業開発部で複数サービスを企画、ローンチ。CMSを提供し1000以上のサイトを分析。顧客サポート、サイト運営にも関わる。
2022年3月に独立後、2024年4月に株式会社BringFlowerを設立。SEOコンサルを活動の軸に据えつつ、AIライティングツールの開発と運営を自ら行う。グッドデザイン賞4件、ドイツユニバーサルデザイン賞2件、米国IDEA賞1件の受賞歴あり。